塩川の紅色
今ははるか遠い山脈
黄褐色に透ける陽光の
高いブナ林の傾斜を行った
川岸のケヤキ道にいて
奥深いブナの枝に降る雪を思う
燃え立つ紅葉の塩川増富渓谷を木賊峠へ
車で登る
人は人と運命を代われず
群れて疎林の秋空に暮らすムクドリもやがて
それぞれ自らの生涯を終える
今年はじめての木枯らしに
大栃山の麓の
ひくい空の
散り残るわくら葉の黄が流れる
葡萄畑の中の家から
とおく去る人を送ると
新しい火葬場の上の層雲がなびく空や
黄葉の木々が並ぶ中道町の谷あいのところどころ
松にまじるウルシの真紅を
バスの窓から見ている
赤石連峰の北岳の肩に
下弦の月が
しろく消えかかっている
あの空の方へ
いつか去るべき魂を抱いて
さまざまな時代を生きた生命がひとつ
またわが傍らを去っていく
めぐる村の季節をくぐって