メジロ揺れる

 

菜の花畑のあいだの細い道を

河津川の黒い樹肌の桜並木の

土手の花のトンネルまでならんで登る

 

職場でともにたたかった仲間と家族が

寡婦となったもの二人 寡夫となったものも二人

同行13

苦しかった勝利から10年目の小旅行

半島に春を探るとしゃれこんだ

 

早咲きのカワヅザクラは重なる枝ごと

濃いピンクに新芽のうす緑も見せて

遠く訪れた人々を明るい声にする

カワヅザクラの原木も満開で

見上げていけばメジロの声が

あふれてこぼれる一本は

あれはタマナワザクラだと

桜の道端で

山の蔓細工をあきなう年寄りがいう

 

春の光のなかを川セリの川原で

ちいさいみどりに遊ぶ家族の上を

雲の彼方の達磨山から

河津浜の方まで吹く風がある

昨日は揺れるバスに乗って

吹雪く枯れカヤの船原峠を越えた

それぞれ内に越えるべき峠をもつもの達

 

まだ硬い花にくちばしを挿して

蜜を吸うウグイス色の羽毛のメジロに

細い枝で先頭のメジロが鋭く鳴く

鳴きながら

枝ごと風に揺られている

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