カッコウ再び
疎林の何処にも孤独はある
人々の地上の
縞模様に並ぶ樹木の陰にある
孤独は木の根にふくらむ散策路にある
孤独とは
声が届かぬ遙かな地底の
聞こえぬ声のさびしさをきくことだ
かなたに暗い天空めざして
もの問う身振りのむなしさだ
新しい太陽にぬれてツバキの葉が光る
空の色にやわらかく透くエノキ
思い出せない痛恨がある
思い出せない木の芽のにおいがあるように
果てもなく続く時間に崩れた異国のながい城壁の
夏空をいまも戦旗の色に流れるもの
ニセアカシヤが散る疎林に
カッコウが再び鳴いている
翼をつけてあらわれた死者の魂
カッコウに守られて
竜王平の田圃が隅々まで
釜無の水に潤い
稲穂を実らせる
カッコウと鳴く鳥よ
わが心の縁にとまって
のぞくうつろに
今は遠く
激しかった闘いの日日や
人の死の悲しみが溶けかかって
うずくまるのをみたか