平和憲法を守る

 

平和憲法を長く守ってきた

いまは鳥葬も風葬も無い時代

 

中巨摩地域母親集会実行委員会・戦跡めぐりのマイクロバスは

祖母石(うばいし)団地の脇をつらなりめぐって

みあげる七里岩の裾へ出た

案内のMM先生は

胸までのゴム長靴に白いヘルメットをつけている

みなが少し笑った

M先生は右手に(なた)左手に(かま)を持って

背丈もあるカヤの穂や

クズの絡むハリエンジュの枝を払って進む

母親たちは倒木を踏んで

石くれをまたいでついていく

七里岩は見分けもつかぬ樹木がかぶさり

ここは戦闘機生産地下工場の入り口になる予定だったが

戦後すっかり時間がたって

素掘りの穴には土砂が崩れて塞がりかけていた

一人ずつ這って入る

懐中電灯の光が交錯するすぐそこまで

地下道は水が張っていて進めない

 

戦争はむかしも今も

放置された若者の屍骸に鳥が群がり

やがて骨に風が鳴るばかり

むなしい天体が音も無く宇宙をさまよう

 

平和憲法の任務は終わったというものがいる

第九条は風葬になどと言うものがいる

たわけを許さぬ母親連が一列にならんで明るく

韮崎七里岩戦跡のやぶを行くのである


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