アンモナイトの渦巻き
アンモナイトは
ジュラ紀・白亜紀の示準化石とされる
背中の渦巻き模様も
体内隔壁のありようも
なぜアンモナイトだったのか
絶滅のわけも
なぞにしたまま
ゆっくり石になった
海は
海でいるのをよしたのはなぜか
アンモナイトを残して
ふところに
二億年も
男のそばで
女が体のふたを開けると
人間の子供が生まれた
それでみんなは喜んだ
それから女は
また体のふたをとって
また子供が生まれた
また男や女みんなが喜んだ
女からはどんどん子供が生まれ
それからもみんな増えるのを喜んで
地表を覆うほどになった
アンモナイトよりずっとあとだ
釜無川原の川音のこもる疎林に
ノカンゾウの花がゆれて
鋭く梢を掠める鳥影がある
すでにいまや終わろうとしてなお
綽然たりえず男が一人
樹間にたたく無辺際の胸を探す
おれは誰だなどと